2023/03/27
アメリカ合衆国はロッキー山脈のふもと、コロラド州ボルダーには印刷業者向けの製品開発を行っているリコーの拠点があります。ここでソフトウェア製品のUX/UIデザインを担当しているMaryam Mahani(マリアム マハニ)に、担当商品のデザインと、その開発過程について聞きました。
デザインの拠点紹介
現場の意思決定のため、情報を集めて視覚化する
UXデザイナーのMaryamです。今回は私が担当している「RICOH Supervisor」のデザインについて紹介します。
印刷業者のお客様にとって、現場の生産性を向上することは大きな関心事です。RICOH Supervisorはお客様が使用しているプリンターからさまざまなデータを収集し、そのデータを分析・視覚化することで、お客様が情報に基づいた意思決定を行うことを支援するソフトウェアです。以下はその一例です。
・ エラーの発生頻度やトータルの印刷数から、古いプリンターを新しいプリンターに買い替えるタイミングを決定する
・ 印刷ジョブが予想以上にインクを消費している状況を見分け、調査する必要があるとしてフラグを立てる
・ エラーの発生頻度と印刷に使用している用紙種類との間に関係があるかどうかを判定する
・ ロール状の用紙の交換に時間がかかりすぎている場合、オペレーターに用紙交換方法のトレーニングを行う必要があるかどうかを判断する(このような印刷業者が扱うロール紙は非常に大きく重いため、交換作業はとても大変です)
日常的に使う人が簡単に使えるように
RICOH Supervisorを使用するお客様は印刷業者のマネージャーなど、現場の意思決定者です。複雑なデータやチャート、グラフは時に威圧的に感じられる場合があります。そのため使いやすさを念頭に置き、日常的に使う人が簡単に使えることを目標にデザインしました。この製品を使うのにデータアナリストである必要はありません。
お客様はいくつかの設定を行うだけで、RICOH Supervisorをすぐに使い始めることができます。お客様が最も必要とされるチャートはあらかじめウィジェットとして用意しているので、お客様はゼロからチャートを定義することなくこれらを使用できます。そしてよく使われるいくつかのウィジェットを一つの画面に集めたダッシュボードは、お客様がよく抱く疑問に対してすぐに気付きが得られるように構成しています。もちろん、このダッシュボードはお客様によってカスタマイズが可能です。
正しいものを創るため、
お客様とともに現場に立つ
私は、このプロジェクト全体を通してとてもわくわくしていました。その一方で、完全な分析アプリケーションを作り、お客様が求めるものをすべて提供するのは大変な仕事だと思い、圧倒されることもありました。
お客様とのインタビューやユーザー調査、競合調査などの情報に基づいて、プロダクトオーナーやテクニカルアーキテクトとともにストーリーマップと主な要件のリストを作成しました。またこの調査によってぺルソナや初期のデザインコンセプトも生まれました。現場の情報に基づくことで無駄のないアプローチをとることができ、最大の効果を得るためにどの機能を最初に実装すべきかを決定することができました。
多くの場合、データはサイロ化されたままです。生産性向上のためには、プリンターだけでなく現場で用いられる他の機器からのデータや、室温や湿度といった環境要因などのさまざまな情報を取得して、それらの相関関係に気づくように視覚化する必要があります。
RICOH Supervisorの開発はリーンアプローチで行われ、大多数のお客様にとって重要な機能を優先的に搭載しています。今後はさらに幅広いお客様のユースケースに適した機能や特徴を利用できるようにする予定です。
Maryam Mahani
マリアム マハニ
UXデザイナー/UXアーキテクト。
ヒューマンロボットインタラクションで博士号取得。
お気に入りの旅行方法は、ある空港への航空券を買い、それとは別の空港からの帰りの航空券を買って、その2つの空港の間を自分で移動することです。その間をいろいろ見て回ることができ、興味深いなと思った場所に長めに滞在することもできるのです。