デジタルサービスを成功に導くUXデザイナーへ!
リコーデザインの新たな挑戦

2025/06/10


この記事ではUXデザインを活用してデジタルサービスの体験価値を高めていくために私たちが取り組んだ、UXデザインの新しい知識習得とプロジェクトでの実践方法についてご紹介します。

UXデザイナーの新たな役割

近年「モノ」そのものではなくサービスを通じた「体験(UX)」の価値が重視されるようになりました。リコーは、OAメーカーからデジタルサービスの会社への変革を進めています。デジタルサービスでは購入時点だけでなく、その後の利用期間全体を通じてお客様との接点が続きます。サービスの購入時や使用時などのその瞬間の体験だけでなく、継続的に価値を感じ使い続けていただくためのUXデザインが重要になります。  

もともとリコーデザインでは、下図の「製品のデザイン」を手がけてきました。それは私たちの強みではあるものの、それだけではデジタルサービスの価値を高め成長させていくことにデザイナーが貢献するには限界があると感じていました。
これからは「UXビジョン」「新規価値創出」「UXグロース」の知識を習得し、デジタルサービスのデザインやUXデザインを実践できる人材へと進化していくことが求められています。こうした取り組みを通じて、お客様に「使いたい」「使い続けたい」と思ってもらえるサービスを生み出すために、私たちは日々チャレンジを続けています。今回はそんな私たちの取り組みについてご紹介します!

私たちの強みであるデザイン領域である製品開発から、UXビジョン、顧客価値創出、UXグロースへと取り組みを拡張していく試み

新しい領域に挑戦する学びと実践

製品開発からさらに領域を広げるため、私たちは新たな知識を習得し実践を重ねています。ここではそれらの活動の一部をご紹介します。
まずは「製品開発」に近い「顧客価値創出」の具体的な実践事例について取り上げます。

顧客価値創出

顧客価値創出のプロセスにおいて重要な役割を果たしているのがUXリサーチです。お客様の具体的な利用状況や課題をきちんと把握することで適切な提案につなげることができます。私たちはお客様の声をしっかりと捉えサービスをより良いものにするために定量・定性両面からアプローチしています。

定量調査:エンゲージメントスコアづくり

サービスの利用状況を5つのセグメントに分け、ユーザーを振り分けた例

お客様がサービスをどの程度活用・定着しているかを可視化するためにエンゲージメントスコアを作成しています。お客様の利用状況データを活用しながら開発チームと指標の意義を共有し、自社サービスに特化したオリジナルスコアとしています。
このスコアを用いてお客様をセグメント化しその傾向を可視化することで、メンバー間でお客様像の認識を揃えています。

定性調査:お客様インタビュー調査

ターゲットとなるお客様へのインタビューを通じてお客様の本音や業務フローを深掘りしています。そこから得たインサイトをもとにサービスブループリントやカスタマージャーニーマップなどを作成し、お客様の行動や感じている課題をわかりやすく整理・可視化⁩します。そしてお客様視点での課題を明らかにしながら、より良い体験づくりにつなげています。

リモートでのインタビュー調査の様子
インタビュー結果から得られたカスタマージャーニーマップ

お客様にインタビューを行っている様子と、得られた情報をサービスブループリントに整理した図
サービスブループリントは、ユーザー体験とサービス提供側の業務プロセスを時系列で可視化し、サービス全体の流れを設計・改善するためのツール

UXビジョン

この領域については、取り組みを始めるにあたってどのように知識を習得したかをお伝えします。

UXビジョンとは、顧客体験を基盤に事業やサービスが目指す「ありたい姿」を描いた理想的な未来像です。UXビジョンを策定することで、価値創出から開発、グロースまでの活動に一貫性を持たせることができます。また、組織の存在意義を再考し、社会や人々にとっての理想の未来を構想することで、サービスの創出と改善を促進します。このように、UXビジョンは、顧客体験を中心に据えた事業の方向性を示すものであり、組織全体が共通の目標に向かって進むための羅針盤となります。

リコーデザインではその手法の理解と知識習得のために、共創型サービスデザイン会社のビジョンデザイナーを講師としてお招きし、ビジョンデザインプロジェクトの実施方法を複数回のワークショップを開催しながら教えて頂きました。UXデザインプロセスにビジョンデザインをどのように取り入れていくか、その手法やプロセスを実践的に学びながら手を動かして体験することができました。

ワークショップで参加メンバーが意見交換している様子
模造紙やポストイットに何やらたくさん書かれています

さらに別の講師をお迎えして、未来洞察の一手法であるシナリオプランニングにも取り組みました。今回は私たちが抱えているプロジェクトを題材に、5年後の世界を想定したシナリオを描きました。普段の業務では見えている課題に焦点を当てがちですが、STEEP(社会、技術、経済、環境、政治)という枠組みを使って世の中の流れを深くリサーチし未来に起こりうる複数のシナリオを描きました。このように世の中の動向をしっかりと捉えた上で未来を描く思考を、今後のプロジェクトに活かしていきたいと感じています。

不確実マトリクスと4つのシナリオ
参加メンバーの様子

リサーチの結果得られた数多くの情報を「不確実マトリクス」で整理し、最終的に4つのシナリオにまとめました。

UXグロース

UXのビジネスインパクトとKPI指標をまとめた図

UXグロース は、UXを起点に 「顧客価値の向上」と「事業成果指標(KPI)の向上」を同じループで回し続ける 成長戦略です。 UXデザインをプロジェクトで実践する中で、その価値をより多くの関連部門に実感してもらうには、UXデザインをビジネスと強く結びつけ「UXデザインが事業に貢献できる」ことを示すことが重要だと考えました。
そこでUXデザインを専門とするコンサルティング会社の方に協力してもらい、あるプロジェクトを題材にUXデザインとKPI(重要業績指標)を結びつける方法を学びました。このプロジェクトで大きな課題となったのはサービスをお客様に導入してもらうことでした。そのため導入に至るまでのUXジャーニーを可視化し、各ステップでどんな壁があるのかを整理しました。そしてそれらの壁を乗り越えるために必要な機能や施策を検討しKPIを導きました。
この経験を通じてUXデザインとビジネスの関係をより深く理解することができました。またお客様体験のジャーニーを起点に「トライアルへの申込数」「資料DL数」などのKPIを導き出すプロセスは、UXデザイナーの私たちに理解しやすくプロジェクトにも取り入れやすい手法だと実感しました。

さいごに

私たちはこのように「UXビジョン」「新規価値創出」「UXグロース」へとデザイン領域を拡張するために様々な学習とプロジェクトでの実践を行っています。新しい領域に挑戦することはとても勇気がいることですが、メンバー全員で力を合わせ着実に前進し拡張領域のプロジェクトに取り組んでいます。

メンバー集合写真
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