「全ての形に意味がある」RICOH GRのデザイン

2022/11/25

 

デジタルコンパクトカメラ RICOH GR が、公益社団法人 発明協会による令和4年地方発明表彰 発明奨励賞を受賞いたしました。同賞の受賞は2018年の RICOH THETA に続き二度目です。

同賞では、GRの以下の点を評価していただきました。
・携帯性、素早く使える操作性、描写性を高めた結果、スナップ写真文化の成長に貢献した
・高画質コンパクトカメラという市場をつくり、スマートフォンとの差別化を行うことで、カメラ産業の維持に貢献した
・道具としての機能性・操作性にこだわり、大きく変える必要のないデザインとしたことで「長く使えるデジタルカメラ」という選択肢を提供した

基本を変えず、しかし世代とともに進化させてきたGRのデザインについて、デザイナーの稲葉 利弥がGR officialGR TV(YouTubeチャネル)などでデザインのこだわりポイントを発信しています。

GRのモックと皮シボ素材

オリジナルの革シボを作った時の話です。膨大な数のサンプルを集め、長い時間を掛けてテストし、やっと納得できるシボが完成しました。ところが、後から気づいたのですが20年以上前のフィルム版初代GRのグリップの革シボに良く似ているのです。改めて初代GRをリスペクトすると同時に、担当するデザイナーは変わっても当時からの変わらぬデザインコンセプトを貫くことができたと実感しました。

新旧GRのモードダイヤル

GRは装飾品ではなく「撮影するための道具」であることがコンセプトです。表面処理も道具としての意味を考え抜きます。ちまたでは「高品質=高級感=金属の輝き」というデザインを良く見かけますが、GRは操作性を追求して違う結論にたどり着きました。

GRのCAD画像

GR IIからGR IIIにフルモデルチェンジしたとき、稜線をC面から角Rに変更しました。本体サイズが小さくなったことからカメラの握り方を検証した結果、稜線の形を変更しました。わずかな違いですが、使う人の立場に立って考えた結果です。GRは全ての形に意味があります。全てのプロダクトデザインにおいて、こうありたいものです。

GRのシャッターボタン

「全ての形に意味がある」はシャッターボタンにも秘められています。長円形状は押しやすい位置とボタンの面積確保を両立するためだと想像がつくと思います。実はもう一つ工夫が仕込まれており、ボタン自体が僅かに傾いています。文章で説明するのは少し難しいので、ブログを是非ご覧になってください。

GR IIIx Urban Edition

GRのコンセプトを維持しつつ、使用シーンを絞った特別モデルをデザインしました。道路のアスファルトをイメージしたボディ塗装を目指したのですが、これが一苦労。大量生産の製品では禁断とされる塗装技術を複数組み合わせています。最終的に良い仕上がりになりましたが、開発中は気が遠くなるくらい大変でした。工場の職人の方々の協力無しには成し得ません。デザイナーはコミュニケーション力が必要です。

各種イベントやブログでGRのデザインについてお話ししていたところ、公式YouTubeチャネルにもお声が掛かりました。GRシリーズを長年愛用していただいているプロカメランの赤城耕一 先生に導いていただき、デザインについて沢山語っています。前編では「GRは道具である」「ボディ塗装は南部鉄器」など。

後編は「モードダイヤルの秘密」「付属品のデザイン」「革シボパターン」「昔の塗装技術」などです。ご覧いただけると嬉しく思います。

稲葉 利弥 近影

稲葉 利弥

長年、デジタルカメラや双眼鏡などのコンシューマー製品を手掛ける。日頃からGRやPENTAXのカメラを愛用。

HOME